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消化器外科

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膵臓がんについて

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概要・特色

通常型膵癌とは

膵腫瘍には、上皮性腫瘍と血管腫リンパ管腫などの非上皮性腫瘍があり、大多数は上皮性腫瘍で、外分泌腫瘍と内分泌腫瘍に分けられます。外分泌腫瘍には、漿液性嚢胞腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍、腺房細胞腫瘍浸潤性膵管癌が有りますが、浸潤性膵管癌が通常型膵癌です。2007年の膵癌登録報告によると、全Stage及びStage不明例を含む通常型・組織型不明の浸潤癌全症例の生存率は1年生存率が1981年-1990年の20.3ヶ月から1991年-2000年の25.7ヶ月、2001年-2004年の40.2ヶ月と飛躍的に改善していますが未だ予後不良の疾患です。

膵癌の正確な病期診断

当院、消化器外科では、「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン」に基づき診断・治療しています。治療方針は「原発性膵癌取扱規約」の進行度分類(図1)により変わってきます。そのため正確な病期診断が必要になります。まず臨床症状、膵酵素/腫瘍マーカー/危険因子、超音波検査を行い、次にCT(造影も含む)およびMRI(MRCP)を施行し、これらの画像診断所見から質的診断が可能であれば膵癌と診断しています。さらに診断が困難である場合には、内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)、超音波内視鏡(EUS)、PET-CTを施行しています。その上で、各種の画像検査により膵腫瘤の質的診断がつかない症例で、治療開始にあたり組織もしくは細胞診断が必要な場合には、確定診断法としてERCP下膵液細胞診、ERCP下組織診、超音波内視鏡下生検(EUS-FNA)、などを施行しています。

図1「原発性膵癌取扱規約(第6版)」進行度分類
  M0 M1
N0 N1 N2 N3  
Tis 0
T1 Ⅳb
T2
T3 Ⅳa
T4 Ⅳa  

膵癌の治療

「科学的根拠に基づく膵癌診療ガガイドライン」の膵癌の治療選択(図2)に基づき、StageⅠ, Ⅱ, Ⅲでは外科切除を行います。外科的切除に意義が有るかを目的に施行された、日本での多施設共同無作為比較試験(Surgery 2004;136:1003-1011)では、化学放射線療法に比較して外科的切除が優れており、この事から根治切除が可能な場合は、外科的切除が第一治療選択であると考えられています。また膵癌に対する手術療法ですが、拡大リンパ節郭清は、欧米の無作為比較試験(Surgery. 2005 Oct;138(4):618-28)、日本での無作為比較試験(厚生労働省班研究共通プロトコールに基づいた膵がん外科的療法の評価に関する研究)で肯定されませんでしたので、術後QOLを損なわない範囲のリンパ節郭清と、腹腔動脈・上腸間膜動脈周囲神経叢の半周郭清を施行しています。

図2 「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン(2009年版)」膵癌の治療選択

図「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン(2009年版)」膵癌の治療選択

StageⅣaは切除可能、切除不能に分かれますが、切除範囲外の動脈浸潤の無い3分岐までの門脈浸潤、腹腔動脈合併切除で切除可能な動脈浸潤は切除可能です。切除可能StageⅣaでは門脈合併切除など行い外科的切除を施行しています。一方、切除範囲外の動脈(Ceriac A, CHA, SMA)浸潤は切除不能です。門脈浸潤などを伴う局所進行切除不能膵癌に対しては、化学放射線療法を施行するか、ゲムシタビンやTS-1による全身化学療法を施行し、切除可能と判断された場合は速やかに外科的切除を施行しています。切除可能の判断に至らなかった症例では、全身化学療法を継続して施行しています。

膵癌に対する根治手術は高難度手術であり、手術関連死は1~3%程度と報告されており、肝胆膵手術の専門医が在籍する施設での治療が勧められています。当院では、肝胆膵高度技能指導医の指導医が在籍し、日本肝胆膵外科学会高度技能修練施設に認定されており、安心して治療を受けていただくことが可能です。

外科的切除がなされた後は、術後補助化学療法を約6か月追加しています。術後補助化学療法は、日本で施行された無作為比較試験(膵がん切除後の補助化学療法における塩酸ゲムシタビン療法とS-1療法の第Ⅲ相比較試験Randomized phase Ⅲ trial adjuvant chemotherapy with gemcitabine vs. S-1 in patients with resected pancreatic cancer)でTS-1による術後補助化学療法群で有意に無再発生存期間を延長したことから、TS-1 80-120mg/日4週投与2週休薬を基本に4コース6ヶ月間施行しています。しかし、下痢などの消化器症状が強く発現する患者さんではgemcitabineを用いた補助療法に変更することもあります。

StageⅣbでは、すでに遠隔転移を持つ膵癌です。全身状態が良好であれば、ゲムシタビンやTS-1による全身化学療法を施行しています。残念ながら全身状態が不良で治療が困難な場合は、除痛など緩和療法を行うことになります。ゲムシタビンやTS-1と他の化学療法剤を併用する事により生存期間を延長できるかは、臨床試験が多数行われており、いくつかの期待される薬剤が有りますが、現在のところは臨床試験の段階です。ゲムシタビンと分子標的治療薬との併用については、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブ(Erlotinib)との併用で僅かですが生存期間の延長が証明されています(J Clin Oncol.;25(15):1960-6, 2007)。エルロチニブ(タルセバ)は、使用施設が限定されていますが、当院では使用可能です。

当院での膵癌に対する新しい化学放射線治療

IMRTを応用した、患者さんに優しい膵癌治療を目指して

これまで、がんに放射線の量(線量)を集中させる様々な方法が追究されてきました。しかしながら従来の方法では、がんと感受性の高い正常組織(小腸、十二指腸、骨髄など)が複雑に近接する場合、がんだけに十分照射することはできませんでした。これを克服するため強度変調放射線治療Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)が開発されました。IMRTとは、最新のテクノロジーを用いて照射野内の放射線の強度を変化(変調)させて照射を行なう方法のことを指します。IMRTを使えば、がんの形に凹凸があってもその形に合わせた線量分布が作ることができます。IMRTは、日本でも2000年頃より開始され、2006年には先進医療に認められました。当院では、2012年より最新式のIMRTを導入し、膵癌の術前放射線化学療法に応用し、切除率の向上、長期生存率の延長を目指し、癌患者さんに優しい治療を行っています。下記に実際に当科にてIMRTを用いて術前放射線化学療法を行い、根治切除できた症例のCTをお示しします。

IMRTを用いた化学放射線療法にて切除可能となった膵癌症例
化学放射線療法施行前

写真 左:膵頭部に径15mm 右:SUV max 5.4

化学放射線療法施行後 

写真 左:腫瘍同定困難 右:FDGの集積同定困難

当院での膵癌根治手術症例数

膵癌根治手術症例数の推移

グラフ 当院での膵癌根治手術症例数

当院での膵癌手術症例数の推移を示します。2013年よりIMRTを用いた術前化学放射線療法を開始し、本年9月の時点ですでに9名の患者様に術前治療を行っております。また、術前治療を行わない症例の手術も実施しており、手術症例数は確実に増加傾向にあります。

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)とは

膵嚢胞には炎症性嚢胞と非炎症性嚢胞があり、非炎症性嚢胞の多くは腫瘍性嚢胞です。腫瘍性嚢胞の内、漿液を産生する漿液性嚢胞腫瘍は、ほとんどが良性腫瘍です。一方粘液を産生する嚢胞性膵腫瘍は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と粘液性嚢胞腫瘍(MCN)に分類されます。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は、当初は良性の膵管内乳頭粘液性腺腫ですが、時間経過とともに、膵管内乳頭粘液性癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍由来浸潤癌と変化していきます。

膵管内乳頭粘液性腫瘍の治療

IPMN/MCN国際診療ガイドラインでは、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)は悪性の可能から全例切除適応とされており、当科でも外科的に切除しています。 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は主膵管型、混合型は原則切除とし、分枝膵管型は腫瘍径3センチメートル以上、壁在結節あり、主膵管径7ミリメートル以上を切除適応としています(図4)。

図4 当院におけるIPMN治療方針

図 当院におけるIPMN治療方針

外科的切除の方法ですが、膵頭部側(十二指腸側)の腫瘍は、亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行しています。膵尾側(脾臓側)の腫瘍は、浸潤癌の場合は、通常型膵癌と同じく郭清を伴う膵尾側切除を施行していますが、当科では浸潤癌で無い膵体尾部腫瘍の場合は(IPMN、インスリノーマなどの低悪性度の膵臓腫瘍に対して適応としております)、低侵襲で整容性にも優れた腹腔鏡下膵尾側切除を施行しています。

図5 腹腔鏡下膵尾側切除の手術創

膵神経内分泌腫瘍とは

神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor)は、消化管や内分泌組織に広く分布する神経内分泌細胞由来の腫瘍です。膵臓では膵ランゲルハンス島と呼ばれる部分があり、様々な膵内分泌ホルモンを産生しています。その様な膵ランゲルハンス島の細胞由来の腫瘍が膵内分泌腫瘍です。インシュリンを産生するインシュリノーマ、ガストリンを産生するガストリノーマ、グルカンゴンを産生するグルカンゴノーマ、ソマトスタチンを産生するソマトスタチノーマなど、ホルモンによる症状を起こす症候性膵島腫瘍と、ホルモンによる症状を起こさない無症候性膵島腫瘍が有ります。無症候性膵島腫瘍には、非機能性膵内分泌腫瘍も含まれます。発生率は年間100万人あたり約10例程度と報告されています。また多発性内分泌腫瘍症(MEN)に合併する場合もあり、全身検索も必要です。

膵神経内分泌腫瘍の診断

ホルモンによる症状を有する機能性膵内分泌腫瘍である、ガストリノーマ(Zollinger-Ellison症候群)、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ソマトスタチノーマ、VIP腫瘍(Verner-Morrison症候群)、GRF腫瘍(Growth-hormone-releasing factor)、ACTH産生腫瘍など機能性膵内分泌腫瘍の診断は、産生するホルモンの高値による診断します。
病理組織学的には、均一な核をもつ小型の円形細胞が索状、リボン状、ロゼット状の配列を示し、免疫組織化学的染色ではクロモグラニンA(chromogranin A)シナプトフィジン(synaptophysin)が陽性です。ソマトスタチン受容体(Somatostain receptor type 1, 2, 3. 4, 5)の陽性度は治療方針の指針となります。2010年のWHO分類により、膵・消化管神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor)は、Neuroendocrine Neoplasm(NEN)と総称され、核分裂像数(10HPF当たりの核分裂像数)とKi-67指数(細胞増殖関連抗原Ki-67に対するMIB-1抗体標識率)から神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumor:NET)G1、G2、神経内分泌癌(Neuroendocrine carcinoma:NEC)に悪性度分類されています。(表1. 2010年WHO分類)
局在診断には、一般に多血性腫瘍である事が多いことから、造影CTが有用です。

膵神経内分泌腫瘍の治療

ホルモン過剰による症状に対する治療と悪性腫瘍に対する治療の両面から治療を考える必要があります。インシュリノーマ以外は非機能性膵内分泌腫瘍も含めて悪性の可能性が高く、悪性腫瘍に対する治療としては、外科的切除が第一選択となります。特に低悪性度腫瘍に対しては、低侵襲手術、縮小手術の適応となります。腹腔鏡補助下膵切除術は2006年に先進医療として、「インスリノーマ、脾動脈瘤、粘液性嚢胞腫瘍、膵管内腫瘍 その他の膵良性腫瘍に係る膵体尾部切除又は核出術に限る」との適応でしたが、2008年には「膵内分泌系腫瘍その他の膵良性又は低悪性腫瘍」と低悪性度腫瘍に適応が拡大され、2012年4月より保険収載されました。施設基準が設けられていますが、当院では施設基準を取得し、腹腔鏡下膵体尾部切除を施行しております。

肝転移に対しては、可能で有れば外科的切除を施行しています。外科的切除が出来ない場合は、多血性腫瘍である事が多い事から経動脈的化学塞栓療法(TACE)が選択されます。ソマトスタチン受容体(Somatostain receptor type 2:SSTR2)陽性の場合には、保険適応に従いソマトスタチンアナログを使用しています。また分子標的治療薬である、mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害剤のエベロリムスは、進行性膵内分泌腫瘍患者の無増悪生存期間を延長させたと報告されており、当院でも使用可能です。

非機能性膵内分泌腫瘍とは

非機能性膵内分泌腫瘍(nonfunctional pancreatic endocrine tumor)とは、ホルモンなどを産生しているが分泌していないか、分泌された産生物が特異的な臨床症状を示さない膵内分泌腫瘍です。体重減少、腹部腫瘤などで発見される事が多いとされています。悪性である場合が多く、外科的切除、腫瘍減量手術、TACE、分子標的治療等が施行されます。

MEN type1(Wermer症候群、多発性内分泌腫瘍1型)とは

多発性内分泌腫瘍(multiple endocrine neoplasia)は、家系内の数人に2つ以上の異なる内分泌組織で腫瘍が発症する疾患です。副甲状腺過形成または腺腫、膵島過形成または腺腫または癌、下垂体過形成または腺腫を合併し、さらに低頻度ですが消化管カルチノイド、褐色細胞腫を合併する場合もあります。頻度は10万人当り2-20人です。

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