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呼吸器外科

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概要・特色

呼吸器外科は、中国地方のがんセンターとして肺がんを中心とした悪性疾患、また呼吸器センターの外科部門を担当するため良性疾患を含めた胸部外科領域の手術を幅広く担当しています。また地域の中核機関として高いレベルの医療を地域の皆様へ提供できるよう鋭意努めています。現在、そのほとんどの症例で3D内視鏡システムを使用した内視鏡手術(胸腔鏡手術:VATSバッツ)を行い、できるだけ体への負担を軽くするために徹底した低侵襲手術を心がけています。主な対象疾患は、原発性肺がん、転移性肺腫瘍、自然気胸、縦隔腫瘍、悪性胸膜中皮腫などです。年間200件超の呼吸器外科手術、100件超の原発性肺がん手術を施行し、これまでに1000件を越える原発性肺がんの手術を経験しています。原発性肺がんに対する進行度別の治療成績(最新の肺癌取扱い規約第8版2017年1月に基づきます)と、内視鏡手術数を含めた症例年度別推移のグラフを図に示します。

図 原発性肺がんに対する手術成績(病理病期別生存曲線;肺癌取扱い規約第8版2017年1月

グラフ

図 内視鏡使用手術(VATS)割合を含めた年度別手術件数の推移

グラフ

当科の特色

国立病院機構の主幹病院、地域のがんセンターとして、医療の質を担保するために以下の特徴ならびに近年の動向があります。

診療内容・対象疾患

診療内容

当科の対象疾患は原発性肺がん、転移性肺腫瘍、自然気胸、縦隔腫瘍、悪性胸膜中皮腫など胸部外科領域全般にわたりますが、それぞれの手術方法を以下に示します。

呼吸器外科の手術方法

低侵襲な鏡視下手術を積極的に適応しています。特に2015年夏に導入した3D内視鏡システムを使用した胸腔鏡下手術(3D-VATS)では、術者らがサングラスのような円偏光メガネをかけモニターを見ることにより、胸の中を立体的に見ることができます(写真参照)。手術に携わる全ての者が立体的な同じ視野を共有し、さらに拡大視も合わさって、従来の胸腔鏡下手術と開胸手術の利点をあわせたような環境下で手術を施行しています。これにより手術時間短縮や出血量減少などの安全性向上に繋がります。胸腔鏡手術を行う患者さんは年々増加し、見た目の傷の大きさだけでなく、早期の回復、術後の痛みの軽減により従来に比べ入院期間も大幅に短縮されています。下記に疾患別の主な手術方法を紹介します。

写真 胸腔鏡手術の風景 手術は3人で施行、中央にモニター

原発性肺がんに対する手術

完全胸腔鏡下肺葉切除術(Pure VATS lobectomy ピュアバッツロベクトミー)

肺癌診療ガイドラインにおいて根治手術が可能な原発性肺がんに対する標準術式は肺葉切除術+所属リンパ節郭清術です。肺がんの存在する肺葉(肺は右3つ、左2つの肺葉に分かれています)の摘出+周囲のリンパ節の切除です。当科では可能な限り3D内視鏡システムを使用した胸腔鏡下手術(3D-VATS)で行っています。具体的には直径0.5-3.0センチメートル程度の穴を3-4箇所程度作成し(写真参照)、そこから棒状の長い鉗子や自動縫合器などを使用しながら患部の切除を行います。体に負担の少ない術式で、現在までに300件以上の手術経験を積んでいます。そのメリット・デメリットを表に示します。

写真 左肺がんに対するピュアバッツロベクトミー術後の傷の状態

表 開胸手術と胸腔鏡下肺葉切除術の比較
  従来の開胸手術 胸腔鏡下肺葉切除術
傷の大きさ 大きく目立つ 0.5センチメートルから3センチメートル と小さい
術後の痛み 比較的強い 比較的弱い
手術侵襲 比較的大きい 呼吸機能の回復早い
術後入院期間 10日から2週間 6日から10日程度
出血量 200g程度 100g程度
手術時間 2時間から3時間 3時間から4時間
緊急時の対応 迅速に対応可能 開胸を行うために時間がかかることも
周囲臓器の合併切除を伴う拡大手術や気管支形成術

腫瘍の摘出が一見困難に見えるような病態においても、根治手術が可能であれば提案させていただくことがあります。進行肺がんにおいても可能な限り3D-VATSにて行いますが、腫瘍を完全切除するために胸壁や周辺臓器、気管気管支形成術(気道の再建)が必要な場合には、10-25センチメートル程度の開胸手術を行うこともあります。抗がん剤治療や放射線療法を加えた集学的治療により根治を目指すこともあります。

胸腔鏡下肺区域切除

上述の肺葉切除よりも小範囲の切除となります。腫瘍の存在する肺区域(肺葉のさらに小さな区分けになります)を摘出することにより、肺葉切除に比べ切除範囲の縮小による肺機能の温存と、腫瘍の確実な切除を目指した手術です。現在は、肺癌診療ガイドラインに従い、早期の肺がん(0期や2センチメートル以下の1期の一部の肺がん)や、ご高齢や併存疾患があるため肺をできるだけ残した方がいい患者さんに施行しています。基本的には肺葉切除同様に3D内視鏡システムを使用した胸腔鏡下手術(3D-VATS)で行います。

胸腔鏡下肺部分切除

肺の表面付近を部分的に切除する手術で、切除範囲は肺葉切除や区域切除に比べて最も小さくなります。早期の肺がん(0期)やご高齢や併存疾患があるため肺をできるだけ残した方がいい患者さんに施行しています。基本的に3D内視鏡システムを使用した胸腔鏡下手術(3D-VATS)で行います。

転移性肺がんに対する手術(胸腔鏡下肺部分切除術、肺区域切除、肺葉切除)

肺は全身の血液が戻ってくる臓器であるため、他臓器のがんが肺に転移することがあり、その際に切除を検討することがあります。たとえ両側肺に存在しているときでも、切除可能と判断した場合には、できるだけ切除を検討します。肺の部分切除、区域切除、肺葉切除など病変の範囲に応じて切除範囲を決定します。基本的に3D内視鏡システムを使用した胸腔鏡下手術(3D-VATS)で行います。

自然気胸に対する手術(胸腔鏡下ブラ切除術)

肺から空気漏れが生じて肺が虚脱した状況を気胸といいます.その原因は肺嚢胞(ブラ)や気腫性肺嚢胞などが破れることです。気胸に対する治療は(1)経過観察(2)胸腔ドレナージ(管を入れた治療)(3)手術があります。(1)は肺虚脱が少ない際に選択します。(2)で空気漏れが消失すれば管を抜去しますが、再発率は50%程度と言われています。(3)手術は再発気胸や胸腔ドレナージを施行したにも関わらず空気漏れが継続する場合などに選択します。気胸の原因となる肺嚢胞などを切除し、さらにカバーリング材による補強などにより再発予防をすることもあります。基本的に3D内視鏡システムを使用した胸腔鏡下手術(3D-VATS)で行います。

縦隔腫瘍に対する手術

胸腔鏡下縦隔腫瘍切除術

左右胸腔(肺の入った部屋)の間に挟まれた部位を縦隔といい、心臓や気管,食道,その他血管・神経のある部分を指します。同部に発生した腫瘍を総称して縦隔腫瘍といいます.良性・悪性様々な疾患が該当し(胸腺腫・胸腺嚢胞・胸腺癌,奇形腫,胚細胞腫,神経原性腫瘍,気管支原性嚢胞など)、外科的切除が適応であれば、可能な限り3D胸腔鏡下に小さな傷での切除を行います。胸腔鏡下に切除が難しいときには開胸下に切除を行ったり、胸骨正中切開にて行ったりすることがあります。病変の広がりによっては周囲の臓器(肺や心膜など)を合併切除することもあります。胸腺腫は重症筋無力症を合併することがあり、胸腺腫のない重症筋無力症も含め拡大胸腺摘出術という術式を選択することがあります。

縦隔鏡下リンパ節生検術

主に気管周囲のリンパ節へのがん細胞の転移の有無や、リンパ節の腫れている原因について確定診断を行うために行います。基本的には今後の治療方針を決定するための検査目的の術式です。頚部に2-3センチメートル程度の傷を設け、気管に沿ってカメラ(縦隔鏡)を挿入し必要な病変を採取します。

悪性胸膜中皮腫に対する手術

胸腔鏡下胸膜生検術

胸膜(胸腔を裏打ちする膜;壁側胸膜、ならびに肺の表面を覆う膜;臓側胸膜)に腫瘍性病変を認める時に診断目的で行う手術です。 基本的には今後の治療方針を決定するための検査目的の術式です。側胸部に1−2箇所の小さな傷を作成し、胸膜の採取を行います。診断には通常の病理診断以外に免疫染色など特殊な検査が必要です。胸水(胸腔内の液体)が貯まらないように癒着剤を胸腔内に散布することがあります。

片側胸膜肺全摘術

壁側胸膜より内側に存在する胸膜・肺をすべて切除する手術です。心膜や横隔膜を合併切除し、さらにそれらを再建することもあります。呼吸器外科領域の中ではもっとも体への負担の大きな手術です。手術の前後に抗がん剤や放射線などを追加することがあります。最近では状況に応じて、肺実質は残して胸膜のみを切除する胸膜切除・肺剥皮術を選択することもあります。

その他の手術

上記以外には間質性肺炎の確定診断のための外科生検手術、真菌や非定型抗酸菌症などの感染症に対する手術、外傷性血気胸の手術、胸壁切除再建術、横隔膜縫縮術などの手術を施行しています。様々な病態に対してできるだけ3D-VATSを使用し、体に負担の少ない手術を目指しています。

禁煙について

呼吸器外科手術では主に肺あるいはその近くを操作します。手術後お元気に退院していただくためには、合併症を予防する必要があります。たばこを吸っていらっしゃる方は、手術後に粘り気のある痰が多く出ますし、さらに痰を排除する仕組みも衰えるため、肺炎を起こしやすくなります。よって手術前の禁煙は必須です。手術後退院後についても、折角の機会ですし新たな肺炎や肺がんの発生を防ぐために、禁煙の継続をお勧めします。

周術期呼吸器リハビリについて

手術の合併症予防として禁煙と並び呼吸リハビリがとても重要です.手術後はみなさんに呼吸リハビリを行っていただいていますが、特に重喫煙者や70歳以上のご高齢の方について、手術後のみならず手術前から呼吸リハビリを行っていただくようにしています。周術期には医師のみならず看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士など様々な職種のスタッフが関わることにより、一丸となって合併症予防を行い、患者さんが元気に退院していただくことを目標に、きめ細やかな周術期管理を行っています。

イメージ 呼吸器リハビリ支援プログラム

治療診療実績

2019年度の症例内訳を表に示します。原発性肺がん、転移性肺腫瘍が対象疾患として最も多く、気胸・嚢胞性肺疾患がその後に続く頻度です。

表 手術対象疾患(2019年度)
原発性肺がん 127 胸腺腫 5 胸腺癌 1
転移性肺腫瘍 20 縦隔腫瘍 6 肺リンパ腫 2
気胸/嚢胞性肺疾患 14 縦隔リンパ節腫大 4 膿胸 2
良性肺腫瘍 4 悪性胸膜中皮腫 8 その他 12
炎症性肺疾患 9 肺分画症 1 合計 215

2011年以降の研究実績:論文(筆頭のみ)

  1. Mimura T, Yamashita Y, Hirai Y, Nishina M, Kagimoto A, Miyamoto T, Nakashima C, Harada H. Efficacy of complete video-assisted thoracoscopic surgery lobectomy using the three-dimensional endoscopic system for lung cancer. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2019 Oct 24. doi: 10.1007/s11748-019-01226-z. [Epub ahead of print]
  2. Mimura T, Yamashita Y, Kagimoto A, Miyamoto T, Nakashima C, Mizutani Y, Asanuma T, Kuraoka K. Safety of a Novel Microwave Surgical Instrument for Lung Parenchyma Dissection During Segmentectomy. Ann Thorac Surg. 2020 Feb 11. pii: S0003-4975(20)30190-9. doi: 10.1016/j.athoracsur.2019.12.068. [Epub ahead of print]
  3. 山下 芳典,チーム医療のコラボレーションを遂行するためのTCSA(Total Care Support Association)の試み.医療.72巻4号 Page172-176(2018.04)
  4. 三村 剛史,肺癌に対する3D完全胸腔鏡下肺葉切除術の有用性 傾向スコア解析による比較検.広島医学.71巻6号 Page469-474(2018.06)
  5. 山下 芳典: がん患者の代謝と栄養管理.東口高志,編.血液がん患者の栄養療法,医薬ジャーナル,2017,123-126.
  6. 三村 剛史: 三次元内視鏡システムを用いた完全胸腔鏡下肺葉切除術の有用性.日呼外会誌,31 巻5 号2017,07.
  7. Mimura T: Complete transection of the left main bronchus caused by blunt thoracic trauma in a child treated by bronchoplasty and lung parenchyma preservation. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2016Feb; 64(2): 113-5.
  8. 山下 芳典: 7)呼吸不全.経腸栄養剤の選択とその根拠.井上善文(編)フジメディカル出版,大阪pp113-119, 2015
  9. 山下 芳典: 分岐鎖アミノ酸 (BCAA) 併用呼吸リハビリテーションの効果 - BCAAと筋タンパク質合成 -. 外科と代謝・栄養 , 49(2): 113-119, 2015.04.
  10. Yamashita Y: Extrapleural pneumonectomy plus rib resection for malignant pleural mesothelioma: a case report. "J CardiothoracSurg. " 18;9(1):176. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 25403819; PubMed Central PMCID: PMC4241212. 2014 Nov.
  11. Yamashita Y: Relationship between the Incidence of Methicilin-Resistant Staphylococcus Aureus Isolation and Consumption of Total Parenteral Nutrition under Management of a Nutritional Support Team International Journal of Health and Nutrition, Vol 5, No 1 Vol 5, 2014,8-12.
  12. 山下 芳典: 高齢者肺がんに対する術後早期回復のための課題-胸腔鏡手術(VATS)を軸とした合併症予防の試み-. 静脈経腸栄養, 29(6)1339-1345(2014.11).
  13. 山下 芳典:「高齢者外科:周術期栄養管理をめぐる諸問題」高齢者肺がんに対する周術期栄養管理の問題点と対策ーチームアプローチによる包括的リハビリテーションー. 外科と代謝・栄養, 48(4)125-130(2014.08).
  14. Yamashita Y: Post-thoracotomy pain and long-term survival associated with video-assisted thoracic surgery lobectomy methods for clinical T1N0 lung cancer: a patient-oriented, prospective cohort study, European Journal of Cardio-Thoracic Surgery 2013; doi: 10.1093/ejcts/ext107.
  15. 山下 芳典: 呼吸器疾患に対する栄養療法  -慢性閉塞性肺疾患(COPD)に誤嚥性肺炎を併発した高齢者の1例- 図表でわかる栄養療法-基礎から学ぶ臨床-. 編集 東海林 徹 株式会社じほう出. 2013.3, 185-190.
  16. Yamashita Y: Video-assisted thoracic surgery lobectomy for lung cancer: the point at issue. General Thoracic and Cardiovascular Surgery(2011.03).
  17. 山下 芳典: 経鼻胃管による経腸栄養は嚥下性肺炎を誘発するのか? 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌;2011.12. 21(3):270-276.

意見、ご質問がございましたらご連絡下さい。
医師の方へ:胸腔鏡手術(3D-VATS)の見学を随時受け付けております。
事務局・ご意見箱:kubota.makiko.ud@mail.hosp.go.jp

スタッフ紹介

氏名 職名・免許取得 専門医、認定医等 得意とする分野
ヤマシタ ヨシノリ
山下 芳典
副院長
呼吸器外科科長
治験管理室長
国際交流室長
広島大学医学部客員教授,臨床教授
広島国際大学客員教授
日赤広島看護大学非常勤講師
医学博士
昭和57年
呼吸器外科専門医
日本呼吸器外科学会指導医
日本胸部外科学会指導医
日本外科学会指導医・専門医
日本消化器外科学会指導医・専門医
日本消化器病学会専門医
日本臨床腫瘍学会暫定指導医
日本静脈経腸栄養学会指導医
日本外科代謝栄養学会教育指導医
日本がん治療認定機構暫定教育医
日本呼吸器外科学会 胸腔鏡手術インストラクター
肺がん、自然気胸、縦隔腫瘍
胸腔鏡手術(VATS)
術前後の抗がん剤治療
臨床栄養管理
ミムラ タケシ
三村 剛史
呼吸器外科医長
腫瘍統計・疫学研究室長
広島大学医学部臨床准教授
医学博士
平成11年
呼吸器外科専門医
日本肺癌学会評議員
日本外科学会指導医・専門医・認定医
日本胸部外科学会評議員
日本がん治療認定機構認定医
肺がんCT検診認定医
呼吸器外科一般
胸腔鏡手術(VATS)
カミガイチ アツシ
上垣内 篤
呼吸器外科医師
平成27年
  呼吸器外科一般

外来診療日割表

午後の診察は完全予約制となっています。

休診の場合がございますのでこちらでご確認ください。

診察時間 月曜 火曜 水曜 木曜 金曜
午前 三村
(中皮腫外来も併設)
  三村
(気胸外来も併設)
山下
上垣内
 
午後 山下        

手術日:全日 火曜日・金曜日

月曜日・木曜日 山下 初診のみ

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