悪性骨腫瘍このページを印刷する - 悪性骨腫瘍

担当診療科

治療について

当院整形外科の骨・軟部腫瘍外科で治療している腫瘍は四肢(手足)や脊椎(背骨)にできる腫瘍です。腫瘍は良性および悪性に大きく分類されますが、整形外科領域の腫瘍には良性腫瘍でも活動性の高い腫瘍(準悪性腫瘍とも言われています)があり幅広い形態を示しています。それぞれの疾患に対応した専門的な治療が必要で、特に手足にできる腫瘍の治療には術後の機能や日常生活動作を最大限に考慮しなければなりません。悪性腫瘍には肉腫と呼ばれる四肢に特異的な原発性腫瘍や、さまざまな内臓の癌腫(肺がん・乳がん・胃がん・前立腺がん・腎がん・肝臓がん・子宮がん・大腸がんなど)から骨・軟部に転移した腫瘍があります。正確な診断を行い、患者さん個々の症状や病態、ご希望に合わせて四肢機能をできるだけ温存した治療方法を行った上で、腫瘍が完全に治癒できるよう様々な分野の専門医と共同で集学的な治療を行っています。当院は国立病院機構の中国地区がんセンターであり、常に最先端の診断および治療を提供することを使命と考え治療を行っています。

診療内容・対象疾患

治療方法のご紹介

まず患者さんの生命予後を第一とした医療を行うことを目的としています。それと同時に四肢機能を温存した治療も、患者さんの将来を考えた上で重要と考えます。当科ではこの課題に対し、現在までに確立された診断・治療法を基本とした上で、最先端の医療を目指しています。

診断

レントゲンやMRI、CTなどの画像をもとに、生検を行い診断します。肉腫は肺を始めとした他臓器に転移することがあるため、早期の正確な診断と適切な治療が重要です。広島県内唯一の「四肢軟部肉腫」に関する国立がんセンター希少がん情報公開施設です。専門性の高い疾患であり、早期診断のため、病院や診療所との連携を強化し、スムーズな紹介を達成しています。 当科で治療を行う頻度の高い疾患についてご紹介します。

肉腫患者さんの血液を用い癌関連物質を特殊染色したもので、循環がん細胞が染色されている。

 

骨肉腫

骨に発生する原発性悪性腫瘍のうちおよそ30%を占めるもので、10代~20代の脛骨や大腿骨に好発します。数か月続く関節の痛みで発症し、まれに病的骨折を来してから発見されることもあります。術前・術後の化学療法と手術による切除の組み合わせが標準治療として確立されており、5年生存率は70%程度まで向上しています。手術は腫瘍組織を正常組織と合わせて切除する広範切除となり、人工関節を使用することが多いです。

 

軟骨肉腫

骨肉腫の次に多い原発性骨悪性腫瘍であり、大腿骨や骨盤に好発します。痛みや腫れで発見されることが多く、Grade1~3に分類されます。放射線療法や化学療法の効果が乏しいとされており、手術療法が基本となります。

 

転移性骨腫瘍

がんはしばしば骨に転移し、強い痛みを生じます。原発巣としては乳房や肺、前立腺、腎臓、大腸などが多いです。転移性骨腫瘍の治療は原発巣の種類によって異なり、化学療法が有効なもの、放射線療法が有効なもの、どちらも有効でないものなどさまざまですが、通常放射線療法が有効であることが多いです。病的骨折を来した際には骨折に対する治療としてプレートや髄内釘を用いた固定が必要となることがあります。

 

脂肪肉腫

筋肉や脂肪などに生じる悪性腫瘍を軟部肉腫といい、その中でも脂肪肉腫が一番多いとされています。軟部肉腫の症状としては、腫瘍によるしこりや、神経の近くに生じた場合のしびれや痛みなどがありますが、通常痛みは伴わないことが多いです。手術による摘出を行うことが多いです。

 

未分化多形肉腫

軟部肉腫の中では比較的頻度の高い腫瘍で、主に中年以降に好発します。悪性度が高いものから低いものまであり、病理検査での悪性所見に応じてより広い範囲での広範切除を要すことがあります。

新しい放射線治療システムを併用した患肢温存手術

四肢の機能を維持するために重要な血管や神経が腫瘍と接している場合、従来では手足を切断するしか方法がなかった症例でも、腫瘍切除後にヘリカルCT技術を応用した新しい放射線治療装置を用いて正確な放射線照射を行うことにより患肢を温存する方法です。当院に新たに導入された日本に数台しかない放射線治療装置を用い、放射線腫瘍科と共同し行っています。集中的に狙った位置への線量照射が可能になります。当該治療に関しては状況に応じた適応がありますので、ご相談ください。

主な血管・神経や指を動かす腱を温存して腫瘍を切除し、放射線治療(IMRT)施行

人工関節などによる再建について

腫瘍を切除した後は大きな組織欠損を生じることがあり、さまざまな方法で再建しないといけません。人工関節センター発足により、人工関節での再建に対しても専門的なスタッフの対応が可能になりました。症例により凍結療法(クライオセラピー)やパスツール処理骨を用いた治療も行っています。

化学療法 (抗がん剤治療)

四肢に原発する悪性腫瘍(肉腫)の抗がん剤治療を専門としたスタッフが行います。抗がん剤治療の適応のある肉腫は限られおり、すべての患者さんに行うわけではありません。近年、軟部肉腫に対して外来通院でも治療可能な抗がん剤(パゾパニブ、エリブリンなど)が保険適応となり、治療の選択肢が増えています。抗がん剤治療の必要がある場合、副作用をできるだけ抑えた治療を行います。

手術前後のリハビリテーション

患者さんが社会復帰された際の日常生活を考慮し、個々の状況に応じたリハビリテーションが必要と考えます。厚生労働省委託事業:がんとリハビリテーション研修終了スタッフを中心とし、がんセンターとしての経験をいかした治療を行います。