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新型コロナウイルス感染症の現状と今後の見通し

呉医療センター・中国がんセンター 院長 下瀬 省二

 昨年は、新型コロナウイルス感染症の流行によって世の中が一変しました。人と人とのかかわりや移動が制限され、直接会って話をする機会が激減しました。その半面、Web会議、オンライン授業などICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)が広がりつつあります。新たな日常では、常にマスクを着用し、三密(密集、密接、密閉)を避けることが、当たり前になっています。
 広島県では、昨年の3月7日に新型コロナウイルス感染症の最初の患者が発生しました。広島県の感染患者の遺伝子解析では、驚くべきことに、この最初の1人のみが武漢型で、それ以降はすべて欧米型であるとのことです。初期段階では中国からの流入はある程度防げましたが、欧米からの流入は防げなかったということになります。
 新型コロナウイルスは、人体に入り、人の細胞を使って増殖します。人の体の中でしか増殖できないため、人から人への感染がなければ、消滅します。まずは、身近なところから、町、市、県、国単位で感染を防止することが重要です。しかし、最終的には、世界全体で防止できなければ、感染は収束しないとも言えます。
 新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社製)は、国立病院機構、地域医療機能推進機構(JCHO)、労働者健康安全機構(労災病院)の3つの施設を対象に先行接種(コホート調査)が行われ、2万人弱のデータが集められました。ワクチンの副反応は、インフルエンザワクチンと比較すると、1回目にはあまり差がなく、2回目には発熱(38.1%)、全身倦怠感(69.3%)、頭痛(53.6%)などの全身症状が多いという結果でした(表1)。注射部位では、発赤、腫脹、熱感などの皮膚症状は少ない傾向にありましたが、痛みはより多い結果でした。2回目の接種の翌日は、発熱、倦怠感、頭痛などのため、仕事を休まなければならない人もいるため、注意が必要です。
 ウイルスの変異に関しては、イギリス型、南アフリカ型、ブラジル型などが報告されています。ウイルスの突起部分のスパイクタンパクに変異が起こり、感染力が強くなると考えられています。ファイザー社のワクチンは、イギリス型に対しては従来型と同等の効果があったが、ブラジル型や、特に南アフリカ型に対しては効果が劣ったという報告があります。今後、南アフリカ型が広まってしまうと、ワクチン接種による感染拡大防止の効果が少なくなる恐れがあります。
 昨年4月にミネソタ大学から発表された論文に、パンデミックの将来予測が報告されています。3つのシナリオが示され、そのうちの2番目のシナリオが日本での新規患者数のパターンとよく似ています(図1、2)。このシナリオ2は、過去のインフルエンザの大流行のパターンです。1918年から1919年に流行したスペイン風邪は、春と夏と冬に3つの波があり、第3波である冬をピークとして、その後は小さい波を繰り返しながら収束していきました。1957年~1958年と2009年~2010年の大流行も同様な経過をたどりました。
 これから予測すると、5月から7月にかけて第4波があり、冬にはもう一度中程度の波が来て、収束することが期待できます。ところが、3月中旬から、大阪や兵庫でイギリス変異株の割合が急増し、大阪での新規患者数は、4月6日に第3波を超える719人を記録し、4月9日には918人に達しています(図3)。このままだと、シナリオ2の予想を大きく上回り、第3波より大きな第4波が全国に波及してしまうのではないかと心配しています。
 世界の新型コロナウイルス感染症の状況は、感染者数1億3273万691人、死亡者数288万726人で、死亡率2.2%です(4月8日時点)。最も感染者の多いアメリカでは、感染者数3054万1000人、死亡者数55万2928人で、死亡率1.8%です。一方、日本では、感染者数49万2875人、死亡者数9301人とかなり低く抑えられています。ところが、日本の死亡率は1.9%で、世界の2.2%と比べれば優れていますが、アメリカの1.8%よりは劣っています。PCR検査数が諸外国に比べ少ないため、死亡率が見かけ上高くなった可能性はあります。しかし、日本でも感染者数が増加すれば、確実に死亡者数も増え、欧米と同様の状況になってしまう可能性があることを示しています。第4波の感染者数を増やさないことが喫緊の課題です。
 当院の新型コロナウイルス感染症専用病棟は、今年1年間は引き続き運用する予定です。3次救命救急センターとしての責務を果たすため、発熱により新型コロナウイルス感染を否定できない急病者も受け入れられる体制を整えています。感染防止対策に万全を期して、一般診療、がん診療などあらゆる領域の疾患を受け入れ、地域のために安心・安全な医療を提供してまいります。当院のスタッフは、すでに新型コロナウイルスワクチンの接種を終了しています。病気は早期診断、早期治療が最も重要です。新型コロナウイルス感染症を含めた検査・診療体制を整えていますので、安心して受診していただければと思います。

表1 海外試験とH1N1インフルエンザワクチンとの比較
図1 新型コロナウイルス感染症の予想シナリオ2
図2 国内の感染状況
図3 大阪府の感染状況

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